けん化
概要
「けん化」とは、
酸触媒を使ったエステルの加水分解は可逆反応でしたが、塩基を使ったけん化は不可逆反応になります。エステル化はカルボン酸+アルコールで起こりますが、塩基があるとカルボン酸が中和してしまい、材料のカルボン酸がなくなってしまうからです。
よって、構造決定の問題などでエステルをばっちり分解したいとき、大抵けん化が使われることになります。
詳細
けん化の仕組み
エステル中のカルボニル基
すると一瞬
最後に、本来なかなか電離しないはずのアルコールが電離した形なので、普段から電離できるカルボン酸から
酸触媒を使ったエステルの加水分解では、分解後の生成物がそのままエステル化の材料なので可逆反応です。一方、けん化の生成物はカルボン酸塩なので、エステル化を起こせずに不可逆反応になります。
セッケン
油脂の多くは自然界から手に入り、グリセリンと高級脂肪酸(*補足3)のエステルになっています。そんな油脂をけん化することで得られる高級脂肪酸塩が「セッケン」です。
高級脂肪酸塩は、長い炭化水素部分が極性が小さい疎水基、カルボン酸イオン
つまり、分子の片側は油にくっつきやすく、もう片側は水にくっつきやすいということです。この性質により、油汚れに高級脂肪酸塩がぶっ刺さりまくることで、油と水が混ざるようになります。
より詳しい話は「セッケン」の辞書を確認してみましょう。
補足
- (*補足1)元々割り込んできたのは
だから、 が外れてしまうこともあります。その場合はまた振り出しに戻るだけですね。確率的にアルコール側が外れることでけん化が起こります。 - (*補足2)塩基のアルコキシドイオン
とカルボン酸が中和反応を起こしたということです。もちろん現実的には、カルボン酸と が中和を起こし、アルコキシドイオン は水と中和を起こす、という場合の方が多いかもしれません。しかし反応の結果としては同じですね。 - (*補足3)高級脂肪酸とは銀座に売ってそうな黒毛和牛の油とかではなく、炭素数が多いカルボン酸のことです。たとえば、ステアリン酸
など。