レンズの公式
概要
中学校でもおなじみのレンズは、高校物理でもしぶとく登場する。いろんなケースが登場するものの、証明や使い方はワンパターンなので、公式の証明と使い方をおさえておこう。
結論としては、凸レンズであっても凹レンズであっても、実像であっても虚像であっても、次の式が成り立つ。これをレンズの公式とか写像公式とか呼ぶ。
ただし、
は物体とレンズとの距離(常にプラス) は像とレンズの距離 (実像はプラス、虚像はマイナス) はレンズによって決まる焦点距離 (凸レンズはプラス、凹レンズはマイナス)
である。さらに、物体に対する像の大きさの比を倍率とよび、
で求めることができる。
以下代表的なケースで証明しよう。用語として、レンズから見て光源のある側を 「レンズの前方」 、その反対側を 「レンズの後方」 という。
凸レンズによる実像
中学でも学んだ通り、凸レンズを通る光の性質として、
- 光軸に平行な光は後方の焦点を通る
- レンズの中心を通る光は直進する
- 焦点から出る光は光軸に平行に進む
というものがあり、レンズに対して、物体が焦点よりも遠くにある場合、レンズの反対側のある位置にスクリーンを置くと、倒立した実像が映る。
このとき、
である。さらに
が成り立つ。ここで
が導かれる。(最後の変形は、両辺を
凸レンズによる虚像
もしレンズに対して、物体が焦点よりも近くにある場合、レンズを通った光はレンズの後方で交わらない。このとき、実はレンズの後方からレンズを通して眺めると、物体の後方に物体と同じ向き(正立)の像が見える。
これは実際に光がそこに集まっているわけではなく、あたかもそこから光が発せられているように見えるだけであり、これを虚像という。
虫メガネを通じて物体が拡大するのは、実はこの虚像の性質を利用している。なので物体に虫メガネを近づけないと拡大されないのである。
これも実像のときと同様で、2つの相似を使えば倍率やレンズの公式を示すことができる。
まず、
である。さらに
が成り立つ。ここで
が導かれる。(最後の変形は、両辺を
このままだと、上の実像の公式と違う式になってしまうが、何とかして揃えることはできるだろうか。(その方が覚える量が減る)
そこで、レンズに対して物体と同じ方に像があるということで、
とおくと、上の倍率は
となり、レンズの公式は、
となるので、実像のときと同じ式で統一的に表すことができてハッピーになる。
凹レンズによる虚像
凹レンズを通る光の性質として、
- 光軸に平行な光は前方の焦点から出たように通る
- レンズの中心を通る光は直進する
- 焦点へ向かう光はレンズ通過後に光軸に平行に進む
というものがあり、レンズの後方からレンズを通して眺めると、物体の後方に物体と同じ向き(正立)の像が見える。(光の進み方から、レンズの前方の焦点よりも内側に像が見える)
これは実際に光がそこに集まっているわけではなく、あたかもそこから光が発せられているように見えるだけであり、虚像である。
このとき、
である。さらに
が成り立つ。ここで
が導かれる。(最後の変形は、両辺を
このままだと、一番上の実像の公式と違う式になってしまうが、これも何とかして揃えることはできるだろうか。
凸レンズの虚像の場合と同様に、凹レンズの場合も虚像なので、
とおくと、上の倍率は
となる。さらに、凹レンズの場合は、
となるので、これも同じ式で統一的に表すことができて嬉しい。
補足
レンズって厚みがあるのに、なんで1回しか折れ曲がってない(屈折していない)のか?と疑問に思うかもしれない。本当はレンズに入射するときと、そこから外に出て行くときで、2回屈折が起こる。
ただ基本的には十分にレンズが薄いとして、略して1回しか屈折を書かないことが多い。