結びの省略
概要
おなじみ「ぞ・なむ・や・か・こそ」の係り結びの法則の中で、結びの語が省略されることがある。
この場合、前後の文脈から判断して、省略されている語を補うという、高等テクが求められる。
ある程度、省略が起こる形が決まっていて、
- 上に断定の助動詞「なり」の連用形 「に」 が来るとき
- 上に格助詞 「と」 が来るとき
に起こるので、それぞれ確認しよう。
上に「に」が来るとき
- にや・にか → 下に来る「ある・あらむ・ありけむ・侍る・侍らむ」などが省略
- にこそ → 下に来る「あれ・あらめ・侍れ・侍らめ」などが省略
※「や・か」の結びは連体形、「こそ」の結びは已然形であることに注意。(係り結びの法則)
例文:いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに(源氏物語)
訳文:どの帝の御代であっただろうか、女御や更衣が大勢お仕えしていらっしゃった中に
※「いづれの御時にか (ありけむ)」と結びが省略されている。
上に「と」が来るとき
- とぞ・となむ・とや・とか → 下に来る「いふ・聞く・思ふ・見ゆる」などが省略
- とこそ → 下に来る「いへ・聞け・見ゆれ」などが省略
※「ぞ・なむ・や・か」の結びは連体形、「こそ」の結びは已然形であることに注意。(係り結びの法則)
例文:たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名をつけにけるとぞ。(徒然草)
訳文:たびたび強盗にあったため、この名をつけたということである。
※「この名をつけにけるとぞ (いふ)」と結びが省略されている。
タグ
# ぞ・なむ・や・か・こそ
# なり(断定)
# 係り結びの法則
# 係結び
# 結びの省略