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ポアソンの法則


概要

熱の出入りがない状態で、気体の状態を変化させることを、断熱変化という。ここでは、熱平衡を保ったまま(つまり常に状態方程式が成り立つ状態で)変化させる、準静的断熱変化を考える。

断熱変化中の気体の圧力を 、体積を 、温度を とおくと、以下の関係式が成り立つ。これをポアソンの法則(ポアソンの式) という。

ただし、「」は定数という意味。

また、得体の知れない という記号が登場しているが、これは定圧モル比熱定積モル比熱の比を表す比熱比という呼ばれるもので、

と定義される。どっちが分母でどっちが分子を忘れやすいので、アルファベットで若いもの()が子ども(分子)になると覚えておこう。

単原子分子の理想気体では、定圧モル比熱定積モル比熱はそれぞれ

であるので、比熱比は

となる。

また、大事なのが、「断熱変化」と聞くと温度も変化しないと勘違いしてしまいそうになるが、気体がしたりされたりする仕事により、熱力学第一法則から内部エネルギーは変化するので、実は温度は変化する。ここは正しく理解しておこう。

この法則の式自体は、知っておかないと解けない問題は基本的にない(状態方程式や熱力学第一法則を真面目に立てれば対応できる)が、知っていると時間が節約できたりする、という類の法則。

余裕があれば、下の導出とともに押さえておこう。

導出

の理想気体を考える。断熱変化の途中の圧力を 、体積を 、温度を とおき、これらが微小変化したとする。

Untitled 1 P1 26.png

それぞれの状態について状態方程式を立てると、

となる。下から上と引くと、

ここで、微小変化なので、は無視することができて、

が成り立つ。

一方で、熱力学第一法則を考える。断熱変化より、受け取る熱量は 内部エネルギーの変化については、定積モル比熱を使った表現を用いて、

気体が外部にする仕事は、微小変化なので、その間の圧力を一定として考えることができ、

となる。よって、熱力学第一法則より、

を得る。これを に代入して、

両辺を で割って、これを変形すると、

ここで、定圧モル比熱 とのマイヤーの関係式を用いて、

なので、比熱比 の定義を用いると、

と変形できる。これを積分すれば、

となって、ポアソンの法則が導かれる。

また、状態方程式より、

なので、上の式は

と変形できて、変化中に物質量や気体定数は一定なので、

の形も導かれる。

補足

準静的ではない断熱変化、例えば断熱自由膨張というものを考えると、このポアソンの法則は成り立たない。(興味ない方は飛ばしてください!)

断熱自由膨張では、熱平衡を保たずに変化しているため、上の導出内で、変化の途中の任意の状態で立てていた状態方程式を、立てることができなくなるため、証明が破綻する。

実際、断熱壁で囲まれた下の部屋 を用意し、 に気体を充満させ、 は真空とする。ここで、 をつなぐコックを放すと気体は吹き出し、十分に時間が経つと熱平衡状態となる。

Untitled 1 P1 25.png

このとき、 はもともと真空なのだから吹き出す気体は仕事をせず、また全体は断熱しているので、受け取る熱量も である。よって熱力学第一法則から内部エネルギーも変化しない。つまり、温度は変化しないのである。

一方で、体積は増えているので、ポアソンの法則の主張である

は成り立たないことがわかる。

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