保存力
概要
ある点から別の点に物体を移動させる間、物体にはたらく力のする仕事が、移動する経路によらないとき、その力を保存力という。ネーミングセンスがなかなかしっくりこない用語の一つとして有名。
逆に、経路によって仕事が異なる場合は、その力を非保存力という。
仕事が移動する経路によらないとは、スタートからゴールへのどんな行き方を考えても、仕事の量が一緒になるということ。定義だけ眺めていても、なかなか頭に入ってこないので、例を通じて確認しよう。
例
【重力】 重力が保存力であることを確認する。ここでは、下の図のように、質量
経路①:A→P→B
経路②:A→B(斜めに直線移動)
経路①について、A→Pの間で重力がする仕事は、仕事の定義より
であり、P→Bの間では、重力の向きと変位の向きが直角なので、重力がする仕事は
と求められる。
経路②について、A→Bの間で重力がする仕事は、仕事の定義より
と求められる。
よって、経路①②で重力がする仕事の量は等しく、またこれら以外のどんな経路を考えても(引き戻したとしても!)仕事の量は変わらないので、重力は保存力である。
【弾性力(発展)】 弾性力が保存力であることを確認する。ここでは、下の図のように、質量
経路①:A→B(一発で終了)
経路②:A→P→B(Pに寄り道する)
経路①について、A→Bの間で弾性力がする仕事は、
と求められる。(仕事の積分計算を知らない方は、興味があれば仕事の辞書の発展事項で確認しよう!)
経路②について、A→Pの間で弾性力がする仕事は、
であり(奇関数の積分の性質を使ってもOK)、P→Bの間で弾性力がする仕事は、
であるので(積分の中身を
と求められる。
よって、経路①②で弾性力がする仕事の量は等しく、またこれら以外のどんな経路を考えても(途中で引き返してきても!)仕事の量は変わらないので、弾性力は保存力である。
補足
保存力を動画で深く学びたい! という方には、化学好きな東工大生・かずきさんの動画がオススメ。保存力の定義から始まり、エネルギー保存則まで、数学的に深く学べる。
なんでこんな力の分類をわざわざ考えるかというと、実は保存力にだけ特権が与えられていて、保存力に対しては「位置エネルギー」を定義することができるという違いがあるため。
詳しくは位置エネルギーの辞書を参照して欲しいが、位置エネルギーとは、物体がある位置にいるだけで相対的に持つエネルギーのことで、スタートとゴールだけで仕事の量が決まるという保存力の性質が効いてくる。
ちなみに位置エネルギーは、大学物理では「ポテンシャルエネルギー」と呼ばれる。位置エネルギーよりも、こっちの呼び名の方がしっくりくるね、と横の席の子と話すことになる。