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慣性力


概要

慣性力は、「なぜそんなものを考えるのか」というストーリーの理解が大事になるので、公式だけを覚える暗記マシーンになろうとせずに、是非じっくりと学んでみよう。

まず、舞台は電車の中とする。電車の中に質量 の小球を糸でつるし、電車が右向きの加速度 で加速しているとする。このとき、小球をつるした糸は一定の角度に傾く。

注1)電車の天井に穴を開けていることになるので、良い子は真似しないように。

注2)電車が正の加速度で加速しまくると、映画に出てくるような暴走列車になるが、そこは目をつむろう。

このとき、電車の外から窓越しに小球を見ているAさんと、電車の中から小球を見ているBくんの2人がいるとする。この2人から見た、小球の運動を考えよう。重力を 、張力を 、糸の傾きを として、運動を考える。

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(加速する電車で動かずに乗っているのは大変なので、Bくんは踏ん張っている)

Aさんが見た小球

静止しているAさんから見て、小球は電車とともに右向きに加速度 で動いているので、小球の水平方向の運動方程式は、

となり、問題なく立式できる。

Bさんが見た小球

一方で、右向きに加速度 で動いているBくんから小球を見ると、少しおかしなことが起こる。

Bくんは電車内にいるので、Bくんから見ると小球は止まって見える(周りの風景を見ると動いてそうに思えるが、Bくんから見た小球の相対的な位置は変わっていない)。

しかしながら、水平方向に唯一はたらく力 は確かにはたらいており、水平方向の力はつり合っていない。加速せず止まっているのに力はつり合っていないということは、「慣性の法則」「運動方程式」が成り立たないように思える。

しかし、この場合でも、小球に、Bくんの右向きの加速度 とは逆の左向きに の力がはたらいていると思えば、運動方程式は

となり立式でき、上と同じ運動方程式を立てることができるようになる。

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慣性力とは

このように、Bくんのような加速度運動をしている観測者が物体の運動を観測する場合、運動方程式が成り立たないように思えるが、実際にはたらく力のほかに、観測者の加速度 の向きと逆向きに大きさ の力がはたらいていると思えば、静止しているAさんと同じ運動方程式が成り立つと見なせるようになる。このために導入された見かけ上の力を慣性力という。(よくバケツを振り回したりできる遠心力も慣性力の一種)

慣性の法則や運動方程式は成り立つと見なせるものの、慣性力は見かけ上の力なので、運動の法則の中でも 作用反作用の法則は成り立たない点に注意(Bくんが、慣性力の反作用のような力を受けることはない)。

補足

観測者Aさんから見たような、慣性の法則が成り立つ座標系(位置の測り方、と思っておけばOK)を慣性系、加速する観測者Bくんから見たような、慣性の法則が成り立たない座標系を非慣性系という。

ちなみに、等速直線運動する観測者から見た座標系(等速度系という)でも、慣性の法則は成り立ち、慣性系になる。

上で見たように、静止するAさんのような観測者から見て運動方程式を立てるのか(慣性系)、加速するBくんのような観測者から見て運動方程式を立てるのか(非慣性系)、どっちでも結論は同じになるので、その都度考えやすいものを選んで運動方程式を書けばOK

非慣性系の中でも、今回の観測者Bくんのような加速度系(加速している観測者から見た位置の測り方)のほかに、回転する座標系もよく出てくる。詳しくは 遠心力の辞書 で学ぼう。

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