なり(伝聞・推定)
概要
※「活用語」とは、動詞・形容詞・形容動詞・助動詞のこと。
下で見るように聴覚による推定を表す。
例文
伝聞
例文:男もすなる日記といふものを女もしてみんとてするなり。(土佐日記)
訳文:男もするとかいう日記というものを、女の私も試してみようと思い書くことにする。
※土佐日記の有名な冒頭。授業でこれを習うと、この表現を真似する人が続出することでも有名。
推定
例文:妻戸を、やはら、かい放つ音すなり。(堤中納言物語)
訳文:妻戸をそっと開ける音がするようだ。
識別のコツ
人から聞いて耳にした「話」や「噂」は伝聞で、それ以外の、鳴き声や物音による場合は推定と押さえておこう。
いずれにせよ、耳から得た情報による推定を表す。
実践上は断定の助動詞「なり」(辞書作成中)との識別が大事。接続が違う。
- 伝聞・推定の「なり」:終止形(ラ変の連体形)
- 断定の「なり」:体言・連体形
また、係り結びの結びの位置の「なる・なれ」は伝聞・推定。
さらに、下で見るように、撥音(ん)の下(省略されている場合もあり)の「なり」は伝聞・推定。
補足
推定の中でも、目で見たこと、つまり視覚に基づく推定を表す。推定シリーズ「なり」「めり」「らし」のニュアンスの違いをおさえておこう。
- なり:聴覚による推定(聞いたこと)
- めり:視覚による推定(見たこと)
- らし:根拠に基づく推定(和歌の中で用いられる)
また、ラ変型の活用語につく場合は、連体形の語尾の「る」が「ん」になり(撥音便化)、その「ん」が表記されない場合があるので、注意しよう。
- あるなり → あんなり → あなり
- なるなり → なんなり → ななり
上の例文でも、このパターンが起こっている。
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